葛布角帯地 山葵

自分の意図の入り込む隙間のない柄を織りたいと考えた
辿り着いたのは格子

格子と縞が現れたり消えたり

経緯(たてよこ)の制約のある織物で、格子と言う柄は必然である
例えば無地であっても、葛の糸の強弱と結び目は縦方向に紋様を作り出し
経方向の座繰り糸の不均一さが交わることで、ランダムな格子紋様が現れる
何もしなくても存在する織物の格子柄に 少しの色を入れてそれを強調する
そこには自然な合理性が存在するように思えた

日本では格子柄はカジュアル着物の代名詞のようになっているからか
急にカジュアル寄りに見えてしまうが
例えばイギリスのタータンチェックは正装で、家紋の役目もあるという
常識は常識として一度横に置いて なるべく先入観なしに眺めてみたい

織っている最中、何気なく撮った写真が、ちょうど春の我が家の山ワサビの色とそっくりだったので「山葵」と名付けた

山ワサビ

経糸の節糸が荒々しさは力強く生きる山ワサビそのもので
格子の中に所々浮き出る緯糸の葛の結び目は、もうすぐ溶けて消えてしまう春の雪

濃いグレーの中に忍ばせた黄色は見えそうで見えないが確実に存在し全体を貫く
それは地中深く太く張り、容易には掘り出せない根のよう
雪の下で虎視眈々と芽吹きを待つ

紫は、芽吹きの葉の色 

ひっそり潜む黄色
紫は芽吹きの葉の色 

緯糸 葛 手績み糸(北海道札幌市)
経糸 絹 座繰り糸(群馬県安中市)
染め ふきのとう、メマツヨイグサ、団栗、ラックダイ(紫鉱) + 生成り
  五寸四分
  一丈九寸二分

こちらの帯地は良いご縁をいただきました。ありがとうございます。
持ち主様の穏やかな暮らしとご健康を守りますように。