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葛布について

葛布(くずふ・くずぬの・かっぷ)とは、葛から繊維を取り糸にし織られた布のことをいう。古墳時代の遺跡からも布として織られた葛の繊維が見つかっている(註1)ことから、日本における歴史は大変古いと考えられる。独特な光沢と質感ゆえ高貴な衣装として好まれ使われてきた経緯があり、その光沢を生かす織り方が今も残る伝統的な産地は静岡県である。ほかにも葛布が生産されていた地域としては鹿児島県の甑島(註2)や佐賀県の佐志が知られており、繊維の取り方や織り方は静岡県のものとは異なり日常着から晴れ着まで幅広く使われていたようだ。そのことから、葛布は日本各地でその土地や人々の暮らしの中で織られ使われていたと考えて良いのではないかと思う。

現代における札幌の葛布について

札幌および北海道には葛や葛布の歴史はごく僅かを除いてほとんどない(註3)。
当工房では、静岡県の大井川葛布で習った方法を元に札幌の土や気候等との兼ね合いの中、着物の帯地という用途に合わせ毎年微調整しながら制作している。葛は札幌に自生するものを採集、染料も一部を除き主に身の回りに生えている植物から得ている。

布は、土地・人・文化・気候、それらの複合的な循環の中から生まれる。北海道の葛で布を織ったからといって、簡単に「葛布」を名乗れるものではないことは重々承知している。実際、土地の違いによる植物としての葛そのものの違いに加え、微生物・気候・道具・織り手等の違いにより、布の風合いは静岡のものとは異なり独自のものとなっている。
私はこれを屁理屈のようであるが「葛布ではないが葛布である葛布」と考えている。札幌での私の小さな制作が、葛布の存在、葛布の産地の発展に少しでも貢献できたらという思いを込めている。

葛布という名称を使うことについて

今の所の私の見解をブログに綴っております。

https://astro-notion-blog-wq9.pages.dev/posts/roots-240204

葛苧づくり、葛ツグリづくりの手法について

現在私がしている方法ついて、講座的にまとめたものを公開しております。
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葛苧の作り方
葛ツグリの作り方


(註)
1 太宰府市文化財情報 472鏡を包んだ葛布 、葛布の歴史(大井川葛布)
2 参考「甑島の葛布」(blog)
3 もしかしたらあるかもしれないことが判明したので今後この文章は書き換わる可能性があります(2025.11現在)。

・更新履歴・
2025.11.8 全体的に文章を手直し。それに伴い脚注追加。
2025.1.26 「葛苧づくり、葛ツグリづくりの手法について」追加
2024.5.4 「葛布という名称を使うことについて」追加