葛布六寸帯地・八寸帯地 ponrayta

ゲンノショウコがグレーの染料になると知ったのはいつだったろう
庭に生えているのを見つけた時は嬉しかった
以来、刈り取らずにそれとなく保護しながら増やしていて、今年は染料として十分な量が採れた

乾燥させてからでないと色が出ないという

葛の繊維は漆黒 絵の具のベタ塗りのようなグレー
絹の糸は赤みがかった茶とも黒ともつかぬ 不思議な色合い

手前が絹・座繰り糸  奥が葛の繊維

思えばゲンノショウコは芽出しの頃の葉も成長してからの茎も 赤みを帯びる
赤を含む植物は多い

春、芽出し
夏 花を咲かせる頃

7月末頃から咲き始める花は白 中にはほんのりピンクがかるのもある
赤いのもあるらしいが見た事はない

小さいが雌蕊の赤に雄蕊の紫が鮮やかで可愛らしく 存在感がある

秋はメリーゴーランドのよう
別名を「神輿草」というのだそうだ

しかしこのメリーゴーランドが「タネを飛ばした後」の形だと知ったのは今年(2021)。
タネを飛ばす前はこの形

タネを飛ばす前

メリーゴーランドの先の丸い部分にタネが入っていて これが弾けることで遠くへ飛ぶ
天気が良い日には、飛んだタネがあちこちにぶつかる音がパチパチする
私の顔にも当たって驚いた 結構痛い

9月中旬 赤とオレンジと黄色と 紅葉が綺麗

前置きが長くなった

この、ゲンノショウコの色を確かめたくて、「ゲンノショウコ」というタイトルの六寸帯地を織った

六寸帯地ponrayta
僅かに潜む紫は雄蕊の色、赤は雌蕊の色 または、芽出しの赤、茎の赤。   生成りの白は、花の白

色の濃い部分は、経も緯もゲンノショウコ染めの糸
なんという色だろう

八寸帯地もご依頼を受け制作


お太鼓は濃い色

リバーシブルで内側を表に出してお使いいただける想定

お太鼓の内側は緯糸に生成りの薄い色

ゲンノショウコは現の証拠、腸の調子を整える事で知られる
アイヌ民族もお腹の薬として用いていたそうだ
調べるとアイヌ語は「ponrayta(ポンライタ)」

「 pon(小さい)rayta(人体に粘着するさく果)」という意味なのだそうで
タネは飛ぶだけでなく粘着するのだろうか?
(参考:アイヌと自然デジタル図鑑「ゲンノショウコ」) 



葛布六寸帯地 ponrayta

緯糸 葛 手績み糸(北海道札幌市)
経糸 絹 座繰り糸(群馬県安中市)
染め ゲンノショウコ、ラックダイ(紫鉱)、コチニール + 生成り
  六寸一分
  一丈一尺一寸二分


葛布八寸帯地 ponrayta

緯糸 葛 手績み糸(北海道札幌市)
経糸 絹 座繰り糸(群馬県安中市)
染め ゲンノショウコ、ラックダイ(紫鉱)、コチニール + 生成り
  八寸二分
  一丈三尺四寸


どちらも良いご縁をいただきました。ありがとうございました。
持ち主様の暮らしを彩り、末長くご愛用いただけますように。