八寸帯地 葛布
タイトルの「Mantle」はマントル 地球の内部構造の一つで地殻の内側部分。地球の内部の営みと地表の営み、人類の営み、その体内の営み、それらがフラクタル図形をなしているのだと気づいた時に自分の存在や葛布の制作もその一部であると思え、何とも言えない安心感に包まれた。細胞レベルの極小の世界から宇宙規模まで全てはフラクタル的循環の中にある。
(参考:blog内記事)
『地球の営みと循環と地表の営みのフラクタル図形』
『地球の営みと地表の営みはフラクタル図形みたい』
2021年に北海道のアポイ岳に登った時にマントルを構成している物質「かんらん岩」がほとんど変質せず地表に出ているというのを見てきた。世界的に大変珍しいのだそうだ。緑色だというので恐らくこれだと思うのだがどうだろう。
Mantleは英語で動詞になると「覆う」「包む」という意味もあるというのでいかにも帯らしい。
マントル即ち循環とフラクタルがテーマなのだから絹と葛の糸を無駄にしないよう、細かく残っている糸や手元に数年在庫してあるものなどを使うこと=素材の循環を優先して柄行を考えた。求める柄を出すために糸を揃えるのではなく、あるものを最大限活かして柄を考えるというスタンスだ。うち数種類は新たに括り染め分けて全体に配置、全ては地球の営みの延長線上にあることを考えて、個人的な意図がなるべく入り込まないようにした。
細かいことを言うとキリがないのでイチイチを説明することは省略するが、一つ言いたいのはフィボナッチ数と「6」である。今回、自分の意図が入り込まないための実践の一つとして経糸の配置にフィボナッチ数列を取り入れた。加えて「6」は自然界に必然的に存在する数字であって数作前から制作に取り入れている。その二種類の数字を交錯させる、イメージは変拍子の音楽のような感じでもあるのだが、その本数の計画の過程で同じ数字が繰り返し出てきてピタッと合うのでゾワッとした。物理や数学に精通した方なら当たり前と思われるかもしれない。なるほど数字とはこういうものなのか。通常、経糸に種類や生産年の違う糸を使うと収縮率などの関係からか布の歪みが出やすいので、歪まないよう工夫をしながら制作するが今回は思ったよりもずっと収まりが良く整った。これも数字的な何かの作用なのか分からないが、そうしたものを身に纏うことで包まれる人の心身も整うのではないかと思うのは飛躍しすぎだろうか。
お太鼓
右側の黒い筋は経糸の絹の節。全体に不規則な生命的リズムを与えてくれる。
お太鼓の内側は濃い色、大きな格子。
前帯と手先にもお太鼓内側と同様の色の切り替えを伴う大きな格子を配置した。前帯は中心で格子と格子でない部分が切り替わるが、その切り替わりをずらすと水色が脇に出る想定。少し長めに織っているのでそうした加減をお好みでしていただけると思う。両端の色が違うので、巻く方向の違いによって出る色も違い、違う雰囲気でお使いいただけると思います。
経糸 絹 座繰り糸(群馬県/ぐんま200)
緯糸 葛 手績み糸(北海道)
染め 蕗の薹、藍、蓬、団栗(柏)、団栗(水楢)、メマツヨイグサ、ゲンノショウコ、ラックダイ / 生成り
丈 一丈三尺五寸五分 (仕上がり帯総丈 一丈を想定)
巾 八寸三分
重さ 約200g
2024年制作
2024.3.20 こちらの帯地は現在ご購入が可能です。お問い合わせはcontactよりお寄せください。storeにも掲載しております。