白膠木

葛布 紅梅 角帯地 「白膠木」


白膠木(ヌルデ) ウルシ科

庭のヌルデの色を知りたかった。ヌルデの木につく虫瘤は「五倍子」、染料として古くから用いられ、色名は「空五倍子色(うつぶしいろ)」という。茶色がかかる灰〜墨色に染められることが多かったとのことから、私も鉄媒染で染めることとした。我が家のヌルデに虫瘤がついたことはないので夏にどんどん伸びる枝葉を失敬し染料にする。経の絹糸、緯の葛糸とも、少し緑がかったようなグレーに染まる。樹液は塗料として用いられたというだけあって、半分は顔料であるという藍染にも似て少し繊維がコーティングされるような感じがあり、経緯合わさると鈍い光沢がなんとも良い雰囲気である。さてこの色は「空五倍子色」と呼べるだろうか。

縦方向のほぼ中央から半分は、緯糸を生成りとした。合わせるお着物や季節、気分によって、前面に出る色合いを変えるなどしてお使いいただけるかと思います。

緯糸が生成りの雰囲気

「紅梅(勾配)」という織り方を試してみている。少し前から何度か試作をし、今回やっと帯地全体に施した。布がしっかりとし、触り心地も良い。通常の織り方の葛布は葛布らしくて良いのはもちろんだが、紅梅葛布もなかなか良い。もしかすると光沢が少し失われるかと思ったが、全くそんなことはなく良かった。この織り方は地の文様となる訳だが、工程上の諸々の理由により必然性のある文様なのだということを感じた。

葛布は元々摩擦抵抗が大きいので緩みにくいが、凹凸があることで更に緩みにくく、特に暑い夏などは、空気の通り道を作るべくユルユルに締めてもきっと落ちてこず締めやすいと思います。

角帯なので人によって締め方が色々とは思いますが、きっと一巻き目に来るだろう部分、少し賑やかになるように色を切り替えています。覗かせたり覗かせなかったりしてお愉しみいただけると嬉しいです。

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(参考文献)
『日本の色辞典』吉岡幸雄著、紫紅社、2000年、p252

経糸 絹座繰り糸(群馬県 ぐんま200)
緯糸 葛手績み糸(北海道 サッポロの葛)

寸法 五寸五分 × 一丈一尺
重さ 約120g

制作 2025.3 作品No.59