「風」というテーマを頂いての受注制作です。各所「偶発的な繋がりと移り変わり」を軸に糸を配置しました。

風は、何かと何かがぶつかり合う場所、あるいは何かと何かの境界線、とにかく性質の違うものの出会う場所で生まれ、流れる先々で出会う何らかの影響を受けて方向や強弱を変える。それは誰の何の意図もないところで起こるけれども、全てにおいて偶発性と必然性が同居したような因果関係の中にある。

思考を巡らせる中で、「風」をテーマにした偉大な芸術作品がたくさんあることを知りました。砂澤ビッキが「風」というタイトルの作品を遺しているので見に行きました。エオリアンハープ、風穴、前線(天気の)、風によって運ばれる様々なもの。一言で「風」と言って、何と色々なイメージが想起されるのでしょう。そもそも空気が動かないと風は起こりませんから、空気のある惑星にしか風は存在しないのだと、宇宙にまで思考が飛びました。
さて、ご依頼主様の抱く「風」のイメージは?どのようなお気持ちで「風の帯」をご依頼くださったのだろう。思いを巡らせる時間は豊かで尊いものでした。

お太鼓は通常このようにしてお使いいただく想定ですが、内側は明るい色合いにして、合わせるお着物によってリバーシブルでお使いいただけるように、また、前帯部分にも濃い色と淡い色の境目を入れ、左右にずらすことで印象を変えることができるようにしております。

この度のご縁に心から感謝いたします。
風が吹き抜けるような心地よさを感じていただけますように。

風  八寸帯地 葛布

 絹 座繰り糸(群馬県/ぐんま200)
 葛 手績み糸(北海道)
染め 藤、白膠木、蕗の薹、藍 +生成り

 八寸三分 
 一丈三尺四寸
重さ 約200g

2024制作