葛布について

葛布(くずふ)とは、葛から繊維を取り糸にし織られた布のことをいいます
その歴史は大変古く、縄文時代の遺跡からも葛の繊維を利用したものが出土しているとか その光沢ゆえ貴族の衣装などに好んで使われてきた経緯もあり、現代でも、蹴鞠の衣装として用いられています
全国的に見ると経緯とも撚りをかけた葛布が生産されていた地域もありますが、糸に撚りをかけず経糸に綿糸や麻糸などを使う織り方が今も残る静岡が現在伝統的産地となっています

当工房でも、静岡/大井川葛布の手法を習い、北海道札幌に自生する葛から糸を取り、植物で染め、主に着物の帯を織っておりますが、土や微生物、気候、道具、織り手の違いにより、その布の風合いは独自のものとなっています



葛布と絹葛布

布の名前はそのまま産地を表します。
植物豊かな日本において、植物由来の手作業の布は当然ながらその土地の気候風土、文化、植生等と密接に関わっており、北海道で葛から糸を取り織ったからといって、それは葛布でありながら葛布ではない、というのが個人的な考えです。

葛布は、経糸が綿でも大麻でも苧麻でも絹でも葛でも、全て葛布と呼んできた歴史があります。しかし経糸が違えば自ずと布の風合いも違います。 現在は経糸に絹を使っているので、私はそれを「絹葛布」と名付け、静岡県の葛布とは区別することにしました。

北海道では、亜麻の繊維採取、手織り布の文化が少しずつ根付いてきています。また、産業用大麻の栽培から糸を作る事へと波及しそうな動きもありました。エゾイラクサから糸を作るワークショップ等も北海道内数カ所で行われています。

「絹葛布」という名前には、「亜麻葛布」「大麻葛布」「エゾイラクサ葛布」といったような、北海道の新しい自然布の誕生を願う気持ちも込めています。



葛について

マメ科、つる性の半低木 春〜夏に伸びてすぐの蔓は青く柔らかいが秋になると木質化する 紫の花は秋の七草に数えられ、7〜8月に咲き甘い香りを漂わせる
根から取れるデンプンは葛粉、根を乾燥させたものは葛根 若芽は山菜、花はお茶としても利用される



北海道の葛について

北海道の植物利用で真っ先に思い浮かぶのはアイヌ民族のアットゥシです
アットゥシはオヒョウの樹皮を利用した織物(衣服) 葛の繊維も何かに利用していたのではないかと随分調べましたが その形跡は全くありませんでした
しかし葛を指す言葉(=オイカラ)はあったそうです

諸方面からの話をまとめて考えると、どうも北海道には葛はもともと生えていなかったが、何かの理由で本州から持ち込まれ、アイヌ民族にとって、利用はせずともその繁殖力は驚異的でとても目立つ植物だったのだろうかと思えます
私が知る限りでも、北海道の葛は年々その生息域を広げています

蔓が絡み付き他の植物を枯らしてしまうので厄介者扱いされがちですが、花も蔓も根も衣食に用いることが出来、また、土手などの緑化・土砂崩れ防止にも役立つ
一度はびこってしまうと手を焼きますが、邪魔だからと嫌わず、管理しながら利用していきたい植物です

*札幌市手稲区近郊で 葛が生えている土地をお持ちの方で 採取にご協力いただける方を随時募集しています
また、同様に、ススキの採取にご協力くださる方も募集しています。ご連絡ください



葛布制作の工程(札幌)

1 葛の採取(6月下旬〜8月上旬)
2 煮沸
3 発酵室づくり、室入れ
4 室出し
5 洗い〜オグソ洗い・芯抜き・仕上げ洗い
6 天日干し
7 葛苧(くずお)裂き
8 糸績(う)み
9 ツグリづくり
10 機準備〜整経(せいけい)・粗筬(あらおさ)通し・経(たて)巻き・綜絖(そうこう)通し・筬(おさ)通し
11 織り
12 仕上げ〜ヒゲ切り・湯通し・張り木(乾燥、布地の整え)・糊かけ(葛粉使用)・張り木(乾燥、布地の整え)・砧(きぬた)打ち



織り染め暦

1月 糸績み 織り
2月 糸績み 織り
3月 糸績み 織り
4月 糸績み 織り ふきのとう染め
5月 糸績み 織り 蓬染め
6月 糸績み 織り 葛採り繊維取り始め
7月 糸績み 織り 葛採り繊維取り 藤染め 藍仕込み
8月 糸績み 織り 葛採り繊維取り終わり 藍染め 赤麻染め
9月 糸績み 織り 藍染め 団栗拾い
10月 糸績み 織り 団栗拾い 団栗染め
11月 糸績み 織り
12月 糸績み 織り





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